理想を目指して 新たな品質工学の道

品質工学会の目指すところ,ビジョン30,大切にすること

ビジョン30

 30周年に向けて、常に全体最適を考え、いかなる場合も顧客視点での評価技術を継続的に提供し、以下を実現します。
 
 “あらゆる分野に評価でイノベーションを”
 
 品質工学会は、目指すところを設定して今後活動をしていきますが、それは理想とするところでもあります。その理想のところに一歩でも近づくため道標として、ビジョン30を定めました。
 
 ビジョン30を定めた背景には、会長の谷本からも指摘されているように現在、品質工学会は三つの課題を持つています。それを解決するためには、これまでの活動の現状を認識しておく必要があります。設立20周年に活動の振り返りをしました。機能性の研究や多次元尺度の研究と開発など、新しい考えや手法の研究や普及において成果があったと認識しました。しかし、団塊の世代が企業の一線から離れ始めた2007年を境に会員減となり、会員同士の交流の質、量とも低下が予測され、価値の高い創造的活動の継続が危惧されてきました。また、実践研究を見ると、一部では、新しい領域へ適用が見られますが、部分的で狭い範囲の適用が多く、問題解決が多いことが反省されました。より源流で理想機能を追究し、より事業に成果に結びつける組織的活動を行うことが確認されました。
 
 これに対して5年前より『マクロ視点で全体最適化』を一つの活動目的にし、再現性の追究だけに終わらないで、先行性、汎用性、社会性の視点からの研究を進めてきました。その結果、より組織的であり、より事業としての核心に触れる領域の成果が報告されるようになりました。品質工学会としては持続的な成長を目指して今後も活動をしていきますが、次の課題を解決していくことが必要です。
 
1) 田口博士が亡き後の研究をどのように引き継ぎ進化させていくか
2) 研究・普及を担ってきた矢野宏博士が行ってきた研究エコシステムの考えをどのように引き継ぎ発展させていくか
3) 会員をどのように増加させていくか
 
 学会は会員で構成されています。過去は任意研究団体として活動していましたが、品質工学を学問として確立することの重要性に加えて、普及の重要性があります。より多くの「ものやサービス」の提供を理想に近づける役割があると認識します。そのためには、量と質の両方を拡大していく必要があります。より多くの方に会員として参加してもらい、会員間の知の交流を促進し、それぞれの会員の知力と実行力を基軸とした成長が不可欠と考えてきました。そのためには、魅力的な学会活動を企画し実行していくことになりました。その一つの活動は、任意研究団体から一般社団法人として活動することです。品質工学の目的を達成するために責任ある団体として活動すると意志決定をしました。さらに加え、新しい知の交流を活発化し魅力ある活動を開始し、新しい会員をより多く迎えることで、研究成果の質と量を拡大していきたいと考えます。
 
 そこで、道標として、“あらゆる分野に評価でイノベーションを”と掲げてみました。これは、品質工学会が目指すところに一歩でも近づくために、今まで取り組んできたマクロ視点での全体最適化をさらに拡大し、品質工学の原点でもある顧客視点に立脚し成果を出していきたいと考えたからです。そして、この道標の下に三つの活動方針を立てて今後活動をします。
 

1.自己実現と社会認知

 品質工学会の目指すところを述べました。それを達成するのは、創始者の田口博士の思いに共感し活動してきた我々会員の知力と実行力が原資になります。知の成熟は、田口博士の研究の仕方に近づくことと考えます。それは、基本に学び、実践と研究により発展させ、やがて新しい知の体系を作り出すことです。会員と所属する組織のそれそれの成長が不可欠と考えます。自己実現とはその成長を実感できるような支援活動を企画し実行に移すことと考えています。
 
 品質工学には、すでに考えと手法の体系が存在します。しかし、その領域が膨大であるため、その基本を学ぶのに苦労をしているのも確かであり、それを学習できる環境の整備も不足しています。会員の誰でも、いつでも、どこにいても基本を学習できる場の提供を企画し実行に移すようにしたいと考えます。より基本を理解した方々に対しては、各専門領域で実践研究していただくことになりますが、学会として組織的にテーマを取り上げ、知を構造化する活動を行い、会員の研究の成果を体系化すると同時に、その活動を通じてお互いの知の創発を行い、会員の研究・実践の実力をサポートしていきたいと考えます。
 
 このような知力と実践力の成熟を客観的に担保し、会員あるいは会員が属する組織や社会に認知していただけるよう支援することも品質工学会の役割だと考えます。すでに制定している各表彰に加えて社会から認知される制度を構築していきます。また、品質工学の成果を事業の成果に結びつけるようにマクロ視点で活動も支援していきたいと考えます。すでに、秋の技術戦略大会の開催や田口賞や品質工学会日本規格協会理事長賞の制定により組織的成長が確認できるような制度を整えてきました。組織的展開力の測定も含めた加速策を考案して提供していきます。
 

2.新しい品質工学の考え、手法の開発

 品質工学の考えと方法の開発は田口玄一博士によりました。田口博士の発想の原点は、現場で活動している技術者や設計者とそのマネジメントをしている方々を支援することでした。現場の活動は、それそれの専門領域で抱える課題となりますが、その課題を解くための機能性評価の開発は不可欠であると考えます。会員として解かなければならない共通テーマを設定して、研究・開発活動を編成して取り組んで行いたいと思います。今までには、開発された新しい品質工学の考え、手法は各専門分野別の品質工学のテキストとして出版されてきました。この活動を積極化すると同時に、未開拓分野で品質工学への要求が強い分野に焦点を当てて研究・開発活動をしていきます。
 

3. イノベーションへの貢献

 今まで取り組んできたマクロ視点での活動を加速していきます。マクロ視点の成果は、新しい「ものやサービス」の創出に帰結させたいと考えます。イノベーションは、異なったアイデアから新しい価値を創出していく活動となります。それには常に社会的関心を持ち、そこからイノベーションを考えることが大切であると考えます。イノベーションには、プロダクト・イノベーションやプロセス・イノベーションなどの領域があるとされています。品質工学会はイノベーションの生産性向上に寄与できないかと考えております。長年、専門技術者と品質工学の研究者が一体となった活動で成果を上げてきました。今、国家レベルや多くの専門技術領域ではイノベーションのテーマを設定し活動されています。このようなプロジェクトとの協業を考え、上記二つの方針を並行して進めながら活動を企画し実行に移していきます
 
 以上の三つのピジョンを達成するための方針を受けて学会として長期計画を立案し活動を開始していきます。